研究概要 |
放射線肺炎の発症に関しては活性酸素を代表とするfree radicalの関与が示唆されてきている.free radicalが生体膜脂質と反応して過酸化が起こり膜の機能と形態両面での変化が引き金となっている可能性がある.そこで我々はまずin vitroの系で肺組織の放射線照射による脂質過酸化を確認すべく実験を行った.ICRマウスを用い摘出した肺を粉砕した溶液に電子線照射20Gyを行い殆ど全ての脂肪酸が減少すること(脂質過酸化)を認めた.同時に抗酸化剤Vitamine EとCoQ10の投与で脂質過酸化の抑制がかかるか調べた.その結果脂質過酸化の低減傾向を認めた.次いでin vivoの系に移しても同様の現象が起こる実験を行った.実験2としてC57B1/6Jマウスを用いて胸部に対し20Gy照射を行い直後と24時間後の変化を調べた.しかし各脂肪酸の変化は照射による減少傾向があるものの有意ではなく,病理組織学的な変化も光顕レベルではコントロールに比べ明らかな変化は認めなかった.そこで実験3として10Gyと5Gyの胸部照射を行い4週間後の変化を調べて見た.脂質の変化の解析ではアラキドン酸やドコサヘキサエン酸などの一部の高位不飽和脂肪酸の減少傾向を認めた.抗酸化剤の投与による変化の抑制は有意ではなかったが,病理組織学的には照射群で炎症性変化を認め,抗酸化剤投与群で炎症の軽減を認めた.抗酸化剤の投与は放射線肺炎の抑制に有効であるが放射線の間接作用からの抗腫瘍効果も減弱させる可能性があると考えられた.
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