研究概要 |
平成3年から8年にかけて行ったヘリカルCTによる肺癌2次検診受診者(のべ597名)の内、肺野抹消部腫瘤を認めた55例につきCT所見を原発性肺癌(以下、原発生)、転移性腫瘍(以下、転移性)、良性腫瘤(以下、良性)に分類して、retrospectiveに検討した。内訳は、原発生肺癌が14例、転移性腫瘍が8例、良性腫瘤が33例である。 腫瘤径は、小さいものほど良性の割合が高かった。特に径5mmでは14例中13例(93%)が良性であった。一方、径が大きくなるにつれて悪性の割合が増し、径20mm以上では、11例中7例(64%)が悪性であった。腫瘤の個数、分布は、良性は1〜6個、転移性は1〜20個、原発性は全て1個であった。腫瘤内部の性状は、良性および転移性では含気型が高率に認められ(それぞれ94%,88%)、原発性では充実型が比較的高率にみられた(43%)。均一性は、不均一が良性14例(42%)、転移性2例(25%)、原発性7例(50%)にみられた。また気管支透亮像は良性7例(21%)、原発性5例(36%)に認められた。辺縁の性状は、良性、転移性、原発性ともに境界明瞭が多かった(順に97%,100%,100%)。また良性、転移性では、辺縁の平滑が高率に認められた(それぞれ85%,100%)。原発性では、棘形成(100%)、胸膜嵌入(71%)、分葉(43%)が高率に認められた。血管の巻き込みについては、肺動脈、静脈ともに原発性で高率に巻き込みを認めた。(各々93%,86%)。良性も肺動脈の巻き込みはみられたが、肺静脈の巻き込みはほとんどみられなかった(各々45%,3%)。 上記結果より作成した3種類のCT仮診断基準案の検討から、径5mmより大きい場合、上記悪性を疑う所見を1項目でも認める場合は、HRCTを行い、さらに精査すべきと考える。一方、径5mm以下で、境界明瞭、辺縁平滑な類円形で数個までのものは、良性の可能性が高く、厳重な経過観察で対処可能なものが多いと考える。
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