本研究の目的は分子遺伝学的手法により精神分裂病患者でNMDA受容体とくにNMDAR1遺伝子の異常があるかどうかを検討することである。 平成7年度から平成8年度は対照研究として13人の正常人を対象とし、NMDAR1遺伝子領域の受容体としての機能に重要なglutamate結合部位であるexon12-19の2840の塩基対のDNAに焦点をあて、この部分の多型性(mutation)の有無を調べたが、結果として多型部位は検出できなかった。平成9年度はやはり対照研究として以下の研究を行った。 最近の外国の研究でNMDAR1遺伝子のexon21に相当する部分に多型部位があることが報告されている[(HSAMDARIC)12694に相当する部位のg→Aへの変異]。そこで新たに正常人20名(男性12名、女性8名)を対象とし、その白血球のゲノムDNAを抽出して、その部位を制限酵素BsmA1で認識し、さらにその部位を含む領域にプライマーを設定してPCRを行った。結果として全例で約2000塩基のPCR産物が確認されたが、そのPCR産物の制限酵素処理ではバンドのパターンは全例で同じであり、多型部位は検出されなかった。これらの結果に関して、上記の約2000塩基は既知の外国の報告よりも約800塩基多く、おそらく人種差によるものと考えられた。また多型部位については既知の報告ではその出現頻度は11%であることから症例を増やす必要があると思われた。
|