研究概要 |
申請者はトロンビンレセプターのN末ペプチド(SFLLRN)が第XIII因子などとは異なる経路で創傷治癒を促進する可能性のあること、また他の製剤に比較して調製(ペプチドの合成)が簡便、且つ安全性が高いことからその創傷治癒における臨床応用の可能性を検討してきた。研究の概要としては創傷治癒に対する効果の検討までには至らず、SFLLRN及び類縁ペプチドの合成、さらにそれらの生理活性を血小板の活性化から検討するに留まった。 a)トロンビレセプターペプチド(SFLLRN)及び類似ペプチドの合成。SFLLRNの他、さらなる高活性の薬剤を追求するために類似ペプチドとしてSFGGRN,SFLLON、SFLLCitN、SFLLKNを合成した。 b)合成ペプチドによるトロンビンレセプター活性化の検討。 ヒト洗浄血小板の凝集反応、細胞内カルシウム濃度、及びATP放出反応により個々のペプチドの生理活性を検討した。 SFLLRNは5-8μMで細胞内カルシウム上昇、ATP放出を惹起し、また血小板凝集を惹起した(EC50:5.5μM)。SFLLON,SFLLCitN,SFLLKNは凝集反応を惹起したが、SFGGRNは凝集反応を惹起しなかった。血小板凝集に対するEC50はSFLLON(20μM)、SFLLCitN(30μM)、SFLLKN(36μM)であった。以上の結果から、今回合成したペプチドの中ではSFLLRNが最もトロンビンリセプター活性化作用が強いと考えられた。
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