研究概要 |
シスプラチン(CDDP)耐性細胞におけるapoptosis誘導時のDNAトポイソメラーゼ(Topo)とp53蛋白発現量の変化を知るために,HeLa細胞とシスプラチン(CDDP)耐性HeLa細胞(HeLa/CDDP),上皮性卵巣癌細胞株KFおよびそのCDDP耐性細胞株KFrを用い実験を行い,以下のような知見を得た.IC_<50>値のCDDP,TopoI阻害剤SN-38,TopoII阻害剤VP-16によりapoptosisを誘導を試み,薬剤暴露後72時間まで経時的に検体を採取,agarose電気泳動法とTunel法にてapoptosisを検出,Westernblot法によりTopoI,TopoIIα,p53蛋白発現量の推移を比較検討した.なお,PCR-SSCP法によるp53遺伝子解析の事前の検索結果から,上記に細胞はすべてwild type p53を有することが確認された. TopoIとTopoIIα,特にTopoIIαの基礎値は耐性株で高い発現傾向が認められた. 1.CDDP負荷:HeLaでHeLa/DPに比して高度のapoptosisを認めた.KFとKFrでは差はなかった.TopoIはKFとKFrで変化がなく,HeLa/CDDPではHeLaに比して漸増傾向が認められた.TopoIIは全ての細胞株で漸増漸減した.p53はHeLaとHeLa/DPでは明らかな変化を認めず,KFとKFrではともに増強したものの,KFrでは小さい変化に止まった. 2.SN-38負荷:apoptosisはHeLa/DPに比してHeLaで高度であった.KFとKFrではapoptosisは軽度で両者に差がなかった.TopoIはHeLaでは不変,HeLa/DP,KF,KFrでは漸増漸減した.TopoIIとp53には全ての細胞株で明らかな変化は認められなかった. 3.VP-16負荷:全ての細胞株で早期よりapoptosisが検出されたが,耐性細胞でやや高度であった.TopoIはHeLaで変化がなく,HeLa/DPで漸減漸増,KFとKFrでは漸増漸減した.p53はHeLaで漸増,HeLa/DPで漸減漸増,KFで漸増漸減,KFrでは漸増した. 以上のことから,CDDPおよびTopoI阻害剤によるapoptosis進行過程にTopoIIαの変動が関与すること,CDDP耐性細胞における抗癌剤誘導性apoptosisの一部はp53非依存性である可能性が示唆された.
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