研究概要 |
頭頸部扁平上皮癌細胞の約47%に発現するMAGE-3遺伝子のコードする癌関連抗原のうちHLA-A2分子と共に癌細胞表面に発現されるペプチド断片であるFLWGPRALVを合成した。次にHLA-A2保有者の健康人の末梢血単核細胞を分離し、interleukin-4(IL-4)とGM-CSFを添加した培養液で培養することにより樹状細胞を増殖させた後、これに上記のペプチドをパルスさせて抗原提示細胞として用い、培養開始後7日目にさらにIL-1,IL-2,IL-4,IL-6を加えて培養を継続した。さらにペプチドの添加を7日おきに、IL-1、IL-2、IL-6のサイトカイン・カクテルを3-5日おきに加えて培養して誘導したエッフクター細胞は培養開始後38日目の細胞傷害試験にてこのペプチドを負荷したT2細胞(HLA-A2陽性細胞で、抗原提示経路に欠陥があり、外部からHLA-A2結合性ペプチドを負荷すると効率良そのペプチドをHLA-A2と共に発現する細胞株)に対してE/T ratio20で約40%の細胞傷害性を示したのに対し、このペプチドを負荷しないT2細胞では約10%の細胞傷害活性しか示さなかった。さらにこのキラー細胞はHLA-A2陽性でしかもMAGE-3遺伝子を発現する頭頸部扁平上皮癌細胞を有意に傷害した。またこの細胞傷害活性はHLA-A2に対する特異的モノクローナル抗体によってブロックされた。MAGE-3遺伝子は睾丸以外の正常細胞には発現されず、頭頸部扁平上皮癌細胞を含めた種々の悪性細胞に発現される癌特異的抗原支配遺伝子であることを考慮するならば、今回の我々の結果はHLA-A2とMAGE-3遺伝子を共に発現する頭頸部扁平上皮癌症例に対するこのペプチドを標的とした癌特異的免疫療法を支持するものである。
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