研究概要 |
小腸移植において、グラフトを拒絶または生着へと導く局所免疫応答の特徴を明らかにする目的で、フロー・サイトメトリーを用いた解析により、グラフト粘膜固有層の浸潤細胞の動態を、1.ドナー/レルシピエント別の由来 2.各サブセットの比率 3.IL-2レセプター発現率の側面より検討した。 DAラット(RT1^a)をドナー、PVGラット(RT1^c)をレシピエントとした系(先行肝移植による小腸グラフト生着誘導が知られている)を用いて、昨年度までの研究では、(1)小腸単独移植による拒絶グラフト(Rg) (2)肝/小腸移植による寛容導入グラフト(Tg)について比較検討してきた。結果は、Rgに比しTgでは、レシピエント由来細胞の浸潤は早期から高率(術後5日目でTg=95.3%,Rg=59.0%)であるが、IL-2レセプターの発現は低率に抑えられ、(Tg=14.7%,Rg=29.5%)、特にレシピエントCD8αβ^+細胞(Tg=3.0%,Rg=26.2%)において顕著であった。これは、肝移植による寛容導入では、グラフトのレシピエント由来細胞は、ドナー抗原に対しanergy状態に陥っていることを示唆すると思われる。 今年度の実験でさらに、免疫抑制剤FK506投与下の小腸グラフト(Fg)を比較検討した。結果は、Fgでは、レシピエント由来細胞率(57.2%)はTg(95.3%)に比して低くRgと同程度であり、そのなかでもCD8αβ^+細胞の比率(9.6%)は、Tg(42.4%),Rg(29.3%)に比し比率に抑えられていた。しかしIL-2レセプターの発現率では、Tgでみられるような顕著な低下は示さなかった(レシピエント由来CDαβ^+細胞:Fg=17.6,Tg=3.0%,Rg=26.2%)。これは、FK506による免疫抑制は、レシピエント由来エフェクター細胞のグラフトへの浸潤抑制が主体であることを示唆すると思われる。 今後は、腸管関連リンパ組織に豊富なB細胞系に対し、ピリミジン合成阻害剤による免疫抑制を試みた小腸移植モデルに関して、本研究を応用することにより、さらに局所免疫応答の特徴が明らかになるものと期待される。
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