部分欠失を有するヒトI型プロコラーゲン遺伝子を導入したトランスジェニクマウス(胎生18日〜生後3ヵ月齢)の臼歯およびその歯周組織について、形態的に観察し、以下の知見を得た。 1、光学顕微鏡レベルでは、トランスジェニクマウス3ヵ月齢の臼歯部歯周組織に骨の低形成、類骨の増生および歯根膜腔の拡大が見られたが、炎症所見や歯根膜線維の走行や断裂などの異常はみられなかつた 2、コンタクトマイクロラジオグラムでは、歯根膜側の歯槽骨でのradiodensityに著しい低下を認めた。 3、歯根膜細胞の微細構造には変化を認めなかったが、重合障害と思われる微細な歯根膜線維が多数見られた。また、線維成分以外の細胞外マトリックス成分の減少も観察された。 4、象牙芽細胞の電子顕微鏡観察では、その細胞内には膨化したrERや液胞状のrERが出現しており、蛋白の合成・分泌機能が障害を受けていることが示唆された。象牙芽細胞の突起の多くは、退縮を思わせる像を呈し正常群のものとは明らかに異なっていた。さらに、極性の分化した形成期象牙芽細胞の形態に達していないことは、象牙芽細胞への分化そのものが抑制されていると示唆された。
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