研究課題
この研究の目的は、個々の対象の経時的に変化する褥創発生要因を項目に取り入れた定量的褥創予測スケールを開発することにある。平成9年度は、昨年度までに帰納的方法でレトロスペクティブに抽出され、褥創発生要因の概念枠組みを用いて作成されたスケールをプロスペクティブに検証した。対象は老人病院の2つの病棟の患者107名とし、方法は試作スケールの概念枠組みの妥当性と重みづけの検討と従来の褥創発生予測スケールであるブレ-デンスケールとの予測妥当性の比較を行った。その結果、今回の対象の年齢は81.6±10.5才で、褥創発生は17名(15.8%)に発生した。その内訳は男性5名、女性12名で、仙骨部、大転子、腸骨で70.6%を占め、その深度はII度が最も多く70%であった。褥創発生の概念枠組みの妥当性をみるために、各カテゴリーを用いてクラスター分析を行ったところ、前段階要因と引き金要因に大別された。さらに引き金要因では、カテゴリーが体圧、全身、皮膚刺激、アクシデントに分類され概念枠組みは検証された。また重みづけについては、感度と特異度から、前段回要因では各カテゴリーの加算は可能だが、引き金要因では加算の必要性がなく、ひとつでもそのカテゴリーが存在すれば褥創発生の危険性が高いことが示唆された。またブレ-デンスケールと予測妥当性についての比較では、今回の試作スケールの方が感度と特異度が高かった。以上の結果から、試作スケールは予測妥当性が高いことが明らかになり、これは縦断的に褥創発生を捉えた概念と抽出されたカテゴリーの実用性による効果と考察した。。
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