研究概要 |
研究目的(1)はファジィ理論と束論との関連やファジィグラフ理論の数学的基礎を明確にすることである. 数学的基礎の確立は難題で関連諸学会において研究が大きく進展したという報告を聞いていない。ファジィグラフ理論に関しては教育工学的な応用の研究が進み,適用事例の範囲を広げることができた. 研究目的(2)はファジィ理論を中学校・高等学校の数学教育の一環として導入する研究である. 中等教育では数学の諸概念を理解させるのに生徒の日常生活から採った具体例が効果的である.前年度の研究から学習指導要領の範囲内でファジィ理論を用いた作題が可能と考え,中学校・高等学校教員と連携してクラブ活動の場で教育実験を行った。数学を敬遠する生徒が増加傾向にある今日,ファジィ理論を用いた具体例の開発は有効であろう.今後も,実際に作題し教育実験を行う研究を継続したい. 研究目的(3)は大学(主として社会科学系,人間科学系)の基礎教育へファジィ理論を導入するための教案作成および教育実験を行うことである. 前年度,教育工学およびファジィ理論関連の学会に提示し,批判,助言を受けた教案の試案を,総合教育セミナーで試行した.毎回アンケートを行って受講生の反応を調査し,それを分析した結果を日本ファジィ学会,教学教育学会で報告した.さらに,医科系の初年次学生対象のファジィ理論の特別講義,教育系の3,4次学生対象の数学教授法の講義でも受講生の反応,意見を調査できた.これらの資料をもとに研究会において検討を重ねて教案の一部を修正し,高等学校の新カリキュラムで学んできた学生に対する数学的思考力涵養にも資する社会科学,人間科学系の基礎教育に適した教案を作成し「ファジィ数学入門」(森北出版)として出版した.
|