研究概要 |
本年度は、これまでの研究で開発した学習指導システムを用いて、多人数を対象とした実験授業を行い、その結果から学習の効果を定性的・定量的に検証した。 1 準備: ハードウェアとマイクロ操作、機械語・アセンブラ語,及び高水準言語BASIC間の関連の学習指導を支援するためのコンピュータシュミレータ(MOCS)を完成した。また,多人数を対象とした実験授業を行うため,外部機器として開発したハードウェアのモデル(実物)を改善し,台数を増加した。 2 実験群の構成: 制御側のコンピュータとして開発したコンピュータシュミレータを使うMOCS群,既に開発した教育用コンピュータを使うEDCOM群,市販のパーソナルコンピュータ上でBASICを用いるパソコン群を設定した。また,制御対象の外部機器としては,作成したハードウェアのモデル(実物)を使う場合と,OHPで説明を受ける場合について試行した。 3 得られた知見: 授業では事前・事後テストや意識調査を実施した。その結果から次の知見を得た。 (1)外部機器の状態の入力や,それを記憶装置に転送するマイクロ操作や低水準言語のプログラムを記述する問題では,BASICを用いたパソコン群よりもマイクロ操作による実習を行ったMOCS群やEDCOM群が優位であった。 (2)外部機器の状態を記憶装置に転送するためのBASICの文の記述では,EDCOM群よりも,高水準言語とマイクロ操作及びハードウェアとの関連の実習支援機能を付加したMOCS群が優位であった。 (3)外部機器を制御するためにデータを送出するBASICの出力文の記述では,EDCOM群やパソコン群よりもMOCS群が優位であった。また,OHPによる説明よりも,実物を使った場合が優位であった。 従って,作成したコンピュータシュミレータMOCSとともに,実物の外部機器のモデルを併用してマイクロ操作に基づいた実習を行うことにより,ソフトウェア(BASIC)の命令の実行によって起こるハードウェア(コンピュータのデータフローや外部機器のモデル)内のデータの流れや論理演算の状態の変化について,実質的な理解を向上できることが明らかになった。
|