1.『蒙求』および『蒙求』続撰書簡の影響関係の体系化のための資料収集。 申請者既蒐の資料の補完を進め、特に幕末・明治期の『蒙求』注釈書の発見に、多大な成果があった。従来この時代分野の調査は、他の研究領域も含め、未開拓の余地が大きく、これらの発見により、従来のカタログを大幅に増補し、今後再分析を進める必要がある。 2.所収人物故事のインデックスデータベースの作成 原撰本たる李瀚『蒙求』の準古注系注文のデータベースと、敦煌資料との関係データベース、および続撰書からは、『純正蒙求』『本朝蒙求』『扶桑蒙求』のインデックスデータベースの作成を行った。 3.周辺領域への影響の調査 平安女流文学者の『蒙求』受容の関係について分析を行い、清少納言『枕草子』における漢文学知識受容の深度の分析を行い、報告をまとめた。 4.所収故事の頻度・出典・時代分布分析 2のデータベースデータに、出典・時代のフィールドを追加した。現段階では、サンプル典籍数が不足しているため、今後のデータ追加により、所収故事の頻度分析を可能とするようにしたい。 5.続撰書著作者の研究 幕末期蘭学者の長崎浩斎、漢学者の東条琴台による『補訂浩斎所蔵千文蒙求目録』を翻刻するとともに、執筆者の事績研究を行い、一部報告をまとめた。特に高岡の人、長崎浩斎は近年医学方面で再評価され始めた人物で、今後文学領域においても、交友関係の広さと同時代文人への影響は、さらには幕末・明治期の文化史上再評価されるべきキ-・パーソンの一人に値することが分かったのは発見である。今後さらに、その事績の追求を深める予定である。
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