生体内の血流観測などに応用されている超音波パルスドプラ法では、測定できる速度に限界がある。そこで、速度推定に用いるパルスドプラ信号を補間して、そのナイキスト帯域を拡大し、測定できる速度範囲を拡大する方法を提案している。本研究では、提案する補間法を血流観測に応用する場合の問題について、流体ファントムを用いて実験的に検討することを目的とした。 このためにまず、補間法の検討に必要なデータを得るための、流体ファントム(疑似血流モデル)を開発した。この流体ファントムでは、内径18[mm]の流路に、最高2[m/s]の流速で、散乱体を混入させた脱気水を定常的に流すことが出来る。また、流量制御弁を制御することにより、脈動流を作ることもできる。これにより、再現性のある実験と受波でんごうデータの収集が可能となった。 流体ファントムの開発と並行して、速度測定範囲を拡大するための補間法について、理論的な再検討を行った。すでに提案している補間法は、速度推定のためのパルスドプラ信号に対して適用するが、送波がパルスであることは考慮していない。このために、送波パルス幅を短くすると、信号の補間誤差が大きくなるという問題があった。そこで、補間法をパルスドプラ信号ではなく受波信号のスペクトルに対して適用することで、送波パルス幅の影響が排除できる方法を考案した。 流体ファントムの開発において多くのトラブルに直面したため、計画が遅れ気味であるが、今後は、流体ファントム実験により得られた信号データを用いてシミュレーションを行い、提案する補間法の有効性を実証していきたい。
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