1.墳丘測量調査 (1)平成8年度は美作地方東部における前期古墳(月の輪古墳以前)の古墳測量を集中的に行う計画をたて、平成8年12月14日〜27日に勝央町(岡山県勝田郡)の美野丘陵上に所在する西ノ宮古墳、美野中塚古墳、美野高塚古墳の測量調査を実施した。美野中塚古墳は平成7年度に墳丘本体の測量は終えていたが、積雪で断念した周辺地の測量を行った。西ノ宮古墳は滝川の平野側だけが丁寧に作られており、従来は円墳とされていたが復元墳長40mの前方後方墳であることが確定した。また、美野高塚古墳も平野側が意識して築造された前方後方墳で、墳長67m前後を測る。特徴的なのは上段部が円丘を呈する点で、これを本来的な築造企画とみなせるならば西山古墳(奈良県天理市)に次いで2例目となる。また、美野高塚古墳では円筒埴輪の使用が確認され、築造時期や月の輪古墳との関係に関してある程度の見通しを立てることが可能となった。 (2)美作地方東部における関係連鎖のモデル化を行うためには、さらに田井高塚古墳(勝央町)、楢原寺山古墳(美作町)、真加部観音堂古墳(勝田町)の墳丘測量が必要であるため、各教育委員会の協力を得て3月8日から3週間の予定でこれを実施する。前二者は前方後方墳で、美作地方の東部で確認されている7基の前方後方墳のうち6基の墳丘測量が完了することになる。 2.資料分析 (1)吉備地方を中心に、現有情報に基づく墳丘築造企画の比較検討を行い、系列関係のモデル化を行った。 (2)平成6年に発掘調査した日上天王山古墳(津山市)の調査報告書をまとめるにあたって美作地方東部における前方後円(方)墳の位置関係のデータ化を行い、首長墳としての認識及び機能が持続したことを前提とすると一定度の傾向性が現れることを明らかにした。
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