研究概要 |
1948年に卵白オボムチンにブタインフルエンザウイルスに対して赤血球凝集阻害(HI)活性があると報告されて以来、オボムチンの構造とウイルスに対する親和性との関係についての研究はなされていない。まず、オボムチンのニューキャッスル病ウイルス(NDV,石井株)に対するHI活性が,オボムチンの内のβ-サブユニットのみに起因すると示した。β-サブユニットは分子量が約40万と非常に大きいため、オボムチンをプロナーゼ処理により低分子化したところ、分子量十数万以下にまで低分子化でき、さらにα-サブユニットの分解物も沈殿物として除去が可能であった。プロナーゼ処理分解物をセファクリルS-400カラムに供して、分子量約16万の成分が分子量約13万と11万と-SS-結合を介して結合した画分(p1)、分子量約12万の成分画分(p2)、約7万〜12万の成分の画分(p3),P4はP3とP5の混合物、及び分子量数万の比較的蛋白質を多く含む画分(P5)に分画した。これらのゲル濾過画分のNDVに対する親和性をHI活性測定から検討した結果、それらの画分はいずれもオボムチンより活性が低いものの、P3,P2,P1,P4の順であると分かった。P5はほとんど活性を示さなかった。これらのアミノ酸と糖組成を検討して、β-サブユニットの構造を推定した。β-サブユニットの糖鎖の多い領域(P2)が2ケ所と糖鎖の少ない領域(分子量平均約5万)が3ケ所存在するとされる。β-サブユニットの糖鎖の多い領域がNDVとの親和性において極めて重要な役割を果たしている。糖鎖の少ない領域はβ-サブユニットの可動性に関与しており、また、α-サブユニットと結合するための-SS-結合領域でもあるとした。
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