研究概要 |
従来報告してきた神経芽腫におけるApoptosisの発現機序を理解するため、Fasおよびその関連物質(蛋白)の発現状態を観察した。 対象と方法:神経芽腫組織のparafin切片を用い、その32検体でFasを、また46検体でFas ligand,およびcaspase-3に対するImmunoperoxydase染色を施行した。さらに神経芽腫組織溶解液中のFas,FasL,caspase-3の発現をWestern blot法により分析し、基質中のcaspase-3様活性についてTyramideシグナル増幅法(TSA)を用いて分析した。caspase-3様活性を呈した腫瘍についてはAc-DEVD-H peptideを用いたInhibition assayを行った。 結果:神経芽腫組織中のFas発現率はわずか12%であった。Fas発現腫瘍においても発現部位陽性細胞の局在とapoptosis発現部位は一致しなかった。これに比べFasLは検索した組織検体全例に発現した。その発現は神経芽腫あるいは節芽腫で、またstageII〜IVの症例で強い傾向にあった。Western blot分析では10例中8例に約40kDaのFasL蛋白帯が検出された。Caspase-3の様々な程度で発現し、10例中4例に著しいcaspase-3様活性を認め、それらはcaspase-3に特異的なinhibitorであるAc-DEVD-Hによって著明に抑制された。 考察とまとめ: 神経芽腫組織はFasLを好発現するがFasは少数の非apoptosis腫瘍細胞に存在し、FasLおよびcaspase-3の発現は著しかった。caspose-3はDNA fragmentationを導く蛋白体の一つであり、神経芽腫におけるapoptosisの発現はおそらくFas非介在性の発現経路によるものと考えられた。
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