研究概要 |
ICRマウスの腹腔を感染の場のモデルとして歯周病原菌A.actinomycetemcomitans(Aa),P.gingivalis(Pg),F.nucleatum(Fn)の投与を行い熱ショック蛋白,γ/δT細胞の誘導について前年報告をした。この間におけるin vivo,in vitroの系でのサイトカインの動態を調べた。 1.in vivoのAa,Pg,Fn 1/10 MLD腹腔投与マウスの腹腔滲出液中の(1)炎症性サイトカインIL-6の産生は12時間がピークとなり以後低下した。Aaが最も高値(1216pg/ml)を示しPg(276pg/ml)で低かった。Aaのみ血清中で認められた。IL-1β産生も12時間がピークでAaとFnで高く929-1042pg/mlを示したが,Pgでは279pg/mlであった。血清中では認められなかった。(2)細胞性免疫関連サイトカインIFN-γはFnで最も高く(2.1ng/ml)7日にピークを示した。Aa(643pg/ml),Pgは低く腹腔よりむしろ血清中に認められた。IL-12はFn(72.3pg/ml),Pg(69.5pg/ml).Aa(46.1pg/ml)の順に低く,ピーク時間も3,5,7日とずれた。(3)IL-4の産生は腹腔より血清において高値を示した。ピークは3-5日でAaが最も高くFn,Pgの順で低くなった。 以上の結果はAa,Pgにおいて液性免疫の関与を,Fnにおいて細胞性免疫関与のサイトカイン産生を示唆した。 2.カゼイン誘導正常および免疫マクロファージ画分細胞のin vitro歯周病原菌刺激のサイトカイン産生の比較ではサイトカインのレベルでは差が認められなかった。IFN-γについてはFn刺激が長時間産生を維持した。 3.液性抗体についてAa,Pg免疫ではIgG抗体が高く,Fn免疫ではIgGよりIgMが高い値を示した。マクロファージの活性化(活性酸素と活性窒素の産生)はFnのみで観察された。 以上の結果はAa,Pgは液性免疫の誘導を,Fnは細胞性免疫を誘導することを示唆した。
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