研究概要 |
本研究では、理論モデルと実験的に得られる時間で平均したオブザーバブルによって特徴付けられる動的事象のタイムスケールを明らかにすることを目指してきた。具体的には、同じ蛋白質に関して得られたX線結晶解析による立体構造の温度困子やNMRオーダパラメータ、およびNMRで得られた構造分布に注目して研究を行ってきた。 今年度は、X線結晶解析・NMRや分子シミュレーションによって得られた天然構造蛋白質の立体構造アンサンブルを主成分分析等の手法を使って解析するオンラインサーバーPCA_MESTを開発した(Yang et al.,Bioinformatics,25,606-614 2009)。酵素蛋白質の活性部位や保存残基はこのサーバーを用いて解析できる構造ダイナミクスと強く相関しており、活性部位を予測するのに主成分分析に基づいた情報が有用であることが示された。 また、我々はタンパク質の配位子によって誘発された応答のスケールに興味を持ち、ミオグロビンがCO解離でどう反応するかを明らかにするため、時間依存の線形応答理論を導出した。MDシミュレーションを用いて、分光データと比較しながら応答のスケールを解析した。今年度は、MD計算によって得られた相関関数を用いる現実的モデルに加えて、多次元調和ポテンシャル上でのLangevin振動子を用いて摩擦の寄与も考慮した理想的モデルについても計算をおこなった。両方の方法論によって得られたスケールはラマンデータと比較をおこなった(現在投稿準備中)。
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