研究計画2年目である平成20年の4〜6月期には、沖縄本島周辺の海域において野外でのサンゴ群集調査を実施した。同じく、設置した光・水温データロガーからのデータ回収をおこなった。各海域から適宜採集された海水については、分光分析法等によって硝酸・亜硝酸・アンモニウムイオン・リン酸塩についてのデータを得た。現在、富栄養化が造礁サンゴに及ぼす影響を視野に入れた実験を進めており、高い栄養塩状態が造礁サンゴの生理的ストレス耐性を低下させうるであろう事を示唆する結果を得ている。加えて、屋外での長期飼育実験を開始しており、通年の環境変化に対するサンゴ共生藻の生理的活性変化を定期的に継続観測中である。2009年は冬季水温・光環境が例年に無く早い時期から上昇するパターンを示しており、生理活性変化の指標である、光合成活性変化にもその影響が顕著に見られた。2007〜08年では、11〜2月における寒冷・弱光ストレス下での生理的傷害や成長への悪影響(生存性低下・成長停止)等について調べた結果、共生する藻類の光合成活性・サンゴ群体の成長率について、夏期の異常高水温時と同等またはそれ以上のストレスがかかっていることを示唆するデータが得られたが、2009年の冬季には温度の上昇に伴い冬季のストレスが抑えられていたことが判明した。一方、今後夏にかけて水温の異常上昇が予想されるため、継続した測定を行っている。そのほか、2008年5月以降に開始したハマサンゴ属における長期モニタリングにより、同サンゴ種の群体間において、季節特有の環境影響を受けやすい群体と受けにくい群体が存在することが始めて明らかとなった。これまでの蓄積データと本研究から得られた初期成果とを合わせて、米国フロリダ州で行われた第11回国際サンゴ礁学会、日本サンゴ礁学会、植物生理学会シンポジウム等で適宜発表をおこない、多分野研究者との議論を交わすことができた。
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