今年度の研究では、マクロな視点から、地方分権改革下における自治体の政策採用のメカニズムを明らかにすることに焦点をおいて進められた。具体的には、全国の市レベルで実施されている少人数教育(少人数指導および少人数学級)の採用を分析対象として、少人数教育の採用に影響を及ぼす自治体の環境要因(政治的要因および財政的要因)を計量分析によって明らかにした。自治体レベルで実施される少人数教育の実施は、地方分権改革を背景として実施が可能になっている教育政策であり、地方分権改革における自治体レベルの政策過程を検証する分析対象として適しているため、本研究で設定している。実際の分析は、近年、時間的にも空間的にも広がりをもつ政策採用分析において多用されているイベント・ヒストリー分析を用いて行われた。分析の結果、政治的要因としては首長の任期数の影響が確認された。また財政的観点からは、財政力指数と、実質収支比率が影響を及ぼしていることが統計的には確認された。教育行政分野における地方分権改革の有効性については様々な議論がなされている。そうした状況下で、本研究は少人数教育という一つの教育政策を検証したものであるが、自治体の政治的要因や財政的要因が影響を及ぼして政策採用に至っていることを踏まえて、地方分権改革の効果がある一定程度見られることを示唆した。またより精緻な政策評価の方法論の検討を行うため、政策評価の研究事例として蓄積が豊富な米国の学級規模縮小の効果検証における方法論のレビューに着手した。
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