研究概要 |
従来の国内外における多くの物体認識の研究は、視覚という単一感覚のみを標的としており、視覚的な物体認識についてはほとんど検討されてこなかった。申請者らは、我々が日常的には視覚と触覚の両方で物体形状を判断している点に着目し、視覚と触覚間での視覚的な物体認識を組織的に調べた。その結果、単一感覚での物体認識は視点依存的な表現形式が用いられているのに対し、異種感覚を含めた視覚的な物体認識では視点独立的な表現形式が用いられていることがわかった(上田・齋木,2007)。しかしながら、このような情報を取得するプロセス、及び情報取得プロセスと表現形式の関係についてはまだわかっていない。今年度の研究の目的は、物体認識課題において三次元物体学習中の眼球運動を計測することにより、観察者が物体のどのような特徴に注目しているのかを明らかにすることであった。実験では、モニタ上に呈示された新奇な三次元物体を2秒間学習した後、再認課題を行った。学習時には、実験協力者は視覚と触覚のどちらの感覚で三次元物体を再認するのかを教示されていた。物体を学習している間、協力者の眼球運動はEyeLink(SR Research社製)によって記録されていた。再認課題では、テスト刺激が様々な角度で視覚と触覚に呈示された。協力者は呈示されたテスト刺激が学習したものと同一物体であるかどうかを回答した。その結果、同一感覚条件では注視点の分布の中心は各物体の要素(sub-component)の連結部分であった。これに対して、異種感覚条件では注視点の分布の中心はsub-componentの中心と連結部分の両方にあった。2つの条件で連結部分を中心に分布している注視点の停留時間を比較したところ、異種感覚条件での停留時間が同一感覚条件に比べて有意に長いことがわかった。この結果は2つの条件で異なる情報を基に物体を表現していることを示唆している。
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