研究課題
微傾斜GaAs(110)面上に分子線成長法により、GaAs/AlGaAs超格子を成長すると、ある成長条件では巨大ステップが形成される。この巨大ステップ構造のある表面にGaAsあるいはAlGaAsを成長すると、膜厚変化あるいは組成変化によって量子細線が形成される。この量子細線をフォトルミネセンス、走査型カソードルミネセンスで評価すると、不均一であること、閉じ込めエネルギーが不充分であることが判明した。これ等を改善するため、コヒーレントな巨大ステップ構造と、充分な膜厚変化が得られる成長条件を求めた。コヒーレントな巨大ステップ構造は500℃位の低温でAs_2ビームを用いると形成できることが分かった。膜厚変化は550℃位の高温で成長すると大きくなり、均一になることが分かった。これより、巨大ステップは低温で量子細線は高温で形成する2段階成長法を用いて均一性の向上を試みた。透過電子顕微鏡および走査型原子間力顕微鏡による構造的評価の結果コヒーレントな巨大ステップが形成され、また膜厚変化も倍以上大きくなっていることが見出された。この2段階成長法で形成された量子細線のフォトルミネセンスのスペクトル幅は狭く、また発光ピークはより長波長にシフトしていることが分かり、均一性が向上し、また閉じこめエネルギーが大きくなっていることを示している。顕微フォトルミネセンスおよび走査型カソードルミネセンスで単一量子細線の光学的的性質を評価した結果、1meV以下のスペクトル幅の発光ピークが測定された。これは、励起子の局在によるものと考えられ、まだ単一量子細線内にもいくぶん不均一が残っていることを示唆している。さらに改善するため、成長中断法を現在検討しており予備的実験ではよい結果が得られている。日独協力してさらに均一な量子細線の形成と光学的性質を明らかにする予定である。
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