研究課題
国際学術研究
中国江西省寄生虫病研究所と上海医科大学公衆衛生学部疫学教室との共同研究として楊子江流域の日本住血吸虫侵淫地における住民の急性および慢性住血吸虫感染症に対する感受性と宿主遺伝要因の関わりについて解析を行なった。対象としたのは、翻陽湖周辺の高度侵淫地(感染率30%以上)である、Zhuxi村およびNanshan村である。Zhuxi村民は、1995年3月に虫卵検査を施行し、その後、住民全員にブラジカンテルによる集団治療を行なっている。その後、夏期の伝播期を経て、12月に再度虫卵検査を行なっている。また、Nanshan村についても同様の調査を1991年から5年にわたって施行しており、それらの結果を基に、再感染に対する抵抗性あるいは感受性について検討を加え、両村で、再感染に対する抵抗性群(R群)として109名、また、通常の再感染をする通常群(N群)103名を抽出した。これらの人達から採血を行ない、DNAを抽出し、HLA-DRB1多型を調べた。その結果、R群に、DRB1*0301および*1201が少なく、1202が増加していることが示された。本研究では、主に治療後の再感染を宿主側の免疫応答性が左右するかについて、HLAを指標として解析した。その過程で、以下のような問題点が明かとなった。まず、第1に、再感染に対する抵抗性や感受性を評価する手段としての虫卵検査の信頼性が、計画した時点で予測できないくらい低く、集団の評価には耐えられても、個人の評価には耐えられないことである。そのため、中間的な群が増加し、信頼にたる抵抗性群のサンプル数が低下した。結果として、HLAの相関を解析するのに十分なサンプル数を得ることができなかった。次に感染危険度を測る手段として水に対する接触度を指標として用いたが、湖沼型の場合、山岳型と比較して、はっきりとした危険度との相関が得られず、むしろ、職業との相関がよりはっきりとしていた。
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