研究課題
国際学術研究
タイ東北地方の2つの湖で、巻貝及び魚における肝吸虫セルカリア及びメタセルカリアの感染率の調査を行ったところ、セルカリアは検出されなかったがメタセルカリアは検出された。これらのメタセルカリア(Ov)をハムスターに与え、肝内胆管癌の誘発実験を試みたところ、(1)Ov抽出粗抗原で免疫後、Ovを感染させ、発癌剤であるジメチルニトロソアミン(DMN)を与えたグループ(G7)及びOvを感染させ、DMNを与えたグループ(G6)の生存率が特に低いこと、(2)結節は他のグループにも少し認められたがG6及びG7に多く認められた。一方、肝臓組織の顕微鏡所見では、発癌剤であるDMNのみを与えたグループでは、投与後23週で30%に肝内胆管癌が発生していたが、事前にOvを感染させたグループでは100%に達した。また事前にOv抽出粗抗原で免疫したものでは制御から進展までいろいろな影響を与えた。Ov感染のみでは胆管の膨張、肝硬変がみられたが癌への進行は見られなかった。細胞外マトリックスのテネイシンの癌胎児性を免疫組織化学で調べたところ、膨張した胆管及び癌間質を取り巻く結合組織、また壊死性癌結節の基質枠に強く反応が現れていた。タイ人と日本人の肝内胆管癌の臨床病理学的比較検討も行なわれた。タイ患者には症状が現れたが日本の患者は無症状であった。腫瘍は日本人では34%が、タイ人では63%が右葉に形成されていた。組織所見では、胆管周囲繊維化や腺腫様過形成はタイ人にしばしばみられた。p53又はc-erbB-2タンパク質の発現には差は見られなかったがMIB1L.I.によって測定された増殖活性はタイの方が明らかに高値を示した。タイ東北地方に分布するOvはを3個所から採取し、r-DNAのITS2の領域の遺伝子配列を調べたところ全て同じ遺伝子配列であった。
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