研究課題
大気・海洋・陸面からなる気候システムの各コンポーネントについて、衛星データ利用、そのための気候モデルの高精度化、4次元データ同化手法の開発、大陸規模の水・熱エネルギー循環の解明、という観点から、研究を実施している。本年度における個々の研究成果の概要は、以下のようである。・昨年度作成した全球河道網の水文学的側面の改良を行ない、精度向上を図った。・陸面過程モデルにおけるサブグリッドスケール地形の影響評価を行った。・二酸化炭素フラックスを算出できる陸面モデルを3次元局地大気モデルと結合し、長期間積分を行なった。また、同陸面モデルを全球大気循環モデルと結合した。・陸面過程モデルと大気データを用いて作成した全球土壌水分分布データを用いて土壌水分の季節変動特性の解析を行なった。その結果、土壌水分の季節変動は、熱帯では降水量に、中高緯度では蒸発に支配されることがわかった。また、土壌水分分布が大気循環に与えるインパクトを評価し、アジアモンスーン域や北米域で影響が大きいことを見い出した。これは、湿潤鉛直成層の不安定化→積雲対流の活発化、というプロセスによる。・中高緯度大陸内部での気候のシミュレーションには、陸面過程、とくに流出のパラメリゼーションげ決定的な役割を果たすことが明らかとなった。地球温暖化実験における大陸内部乾燥化、高温化の程度の解釈には注意が必要である。・雲解像大気モデルによるシミュレーションによって、静穏な大規模場のもとでも、対流雲によって引き起こされる大気海洋間の水・熱エネルギー交換の定量評価が可能になった。この結果は、大循環モデルに用いられるパラメタリゼーション改良の指針となる。・昨年度開発したマイクロ波放射計の輝度温度データを直接大気モデルに同化するスキームにより同化および予報実験を行なった。大規模な乾湿場のコントラストが改善され雲クラスターの予報も改善された。・海洋大循環モデルを用いた4次元データ同化システムに、TOPEX/POSEIDON海面高度データを取り入れる方法の改良中である。
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