140アミノ酸からなるランダムポリペプチドのライブラリーを作った。これらは95残基のランダム配列と両末端の固定領域とから構成されている。これらのポリペプチド70種類のうち、約50%が大腸菌で発現可能で、約10%可溶性であった。このことは蛋白質の大腸菌内でのプロテアーゼなどに対する安定性や溶解性はポリペプチドの物性としてそれほどまれでないことを示している。精製した2つの可溶性ランダムポリペプチドは硫安に対してS字型の沈殿を示した。また、ある硫安濃度以上では熱処理によって沈殿が生じた。このことよりランダムポリペプチドでも疎水性コアと親水性表面を作っていると考えている。CDは2次構造がわずかしかないことを示した。また、沈降平衡法によるとモノマーとテトラマ-の平衡にあると解釈された。さらに微量ながらエステラーゼ活性があった。二つ異なる配列を持つ可溶性ランダムポリペプチドは異なる基質特異性を示した。このことはランダムポリペプチドの機能はゼロでなく、配列を人工的に変えれば進化させうることを示している。 以上の結果は、程度の差はあるが、天然の蛋白質の性能はポリペプチドに見られるものであることを示す。また、蛋白質の初期進化において、数多くの配列の中から特別な配列が選ばれなくても進化し得ることを示している。この後はこのランダムポリペプチドを進化的な方法で天然の蛋白質に近づけていく。そして人工進化のどの段階で蛋白質のコンパクトさ、二次構造、高次構造が現れるを明らかにしたい。
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