認知のメカニズム

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08279102
• 研究種目: 重点領域研究
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 吉澤 修治 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (90010959)
• 研究分担者: 乾 敏郎 京都大学, 文学部, 教授 (30107015) ; 田中 啓治 理化学研究所, 情報科学研究室, 主任研究員 (00221391) ; 永野 俊 法政大学, 工学部, 教授 (30198345) ; 斎藤 秀昭 玉川大学, 工学部, 教授 (30215553) ; 岩村 吉晃 東邦大学, 医学部, 教授 (20057508)
• キーワード: 第二体性感覚野 / TE野コラム構造 / V1の面刺激応答 / オプティカルフロー / 動画像認知 / MEG-fMRI無侵襲計測 / 視覚順逆変換系 / implicit motor imagery

研究概要

岩村は無麻酔サルを用いて、単一細胞の活動を調べ、第二体性質感覚野には複数体部位に跨る受容野をもつ細胞が存在すること、おおまかな体部位局在的再現が存在することを示した。さらに、頭頂間溝から広範囲への拡散的投与があることをBDAを用いて示した。第二体性質感覚野が異なる体部位からの感覚情報の統合の場であることを示す。田中は光計画法を用いて、TE野には図形特徴に対応する直径約0.4mmのコラム構造があり、関連した図形特徴に反応するモジュールが隣接していることを明らかにした。さらに、PHALによる軸策終末標識によりTE野の各部位から周嗅野のひろい範囲に結合があることを確認した。周嗅野が複雑な物体像の弁別や連想に関与していることを示唆する。小松はサルのV1の中心近傍について、単一細胞の活動を調べ、約1/3が(輪郭や角ではなく)面イメージ全体にわたって活動することを示した。一方、盲点を覆う白色正方形刺激に対するV1の盲点表現領域の応答を調べ、2、3層では反応がないが深層では反応が見られることを示し、V1の盲点における充填知覚と面の知覚に関する役割を解析した。斎藤は輝度による広視野テクスチャーパターンの並進直線運動と色度によるものとに対するヒトの心理的認知特性の変化とサルのMST野のD細胞の応答特性に対応関係があること、MST野ではポピュレーションコーティングが用いられていることを示した。また、図と地の判別が困難なパターンを用いて図地分離における視覚充填に対する主観的注意の影響を調べた。永野は局所的速度ベクトルの分布から物体全体の速度ベクトルを求める方式を提案しそれを神経回路網モデルを用いて実現した。これは並列的局所的情報への分解と全体情報への統合という大脳皮質における情報処理の典型の一つである。宮内はMEG(122ch.全頭型)とfMRI(1.5T)を用いて、聴覚欠落刺激に対する脳活動を調べた。音刺激に対する誘発脳磁場(N100)の信号源に関しては従来通り第一聴覚野およびその周辺に推定された。一方、聴覚欠落刺激に対する信号源は右側頭領域優位に推定され、fMRIにおいても同様な部位に活性化が認められた。乾は立体視は脳内における視差勾配の計算で得られていること、それが表面の勾配を検出する機構で説明できることを示した。さらに、眼球運動情報と視覚情報の統合過程に関する順逆変換モデルを提案した。また、形状の類似度とカテゴリー化を説明する順逆変換神経回路モデルを3次元空間の実物体の認知に拡張するために、認知の内部表現とその処理を検討するための心理物理実験を実施した。安藤はView-based-approachに基づく3次元物体認識モデルを発展させ複数の物体の入力物体像を自動的に類別して認識機能を獲得する教師なし学習モデルを提案した。さらに、未学習の変換画像に関して既学習の回路網による物体像表現の推定と入力物体像との整合を双方向的に逐次的に高める動的認識モデルを提案した。吉澤は視覚的に提示された左右手弁別課題における脳活動の時間・空間構造をMEG(64ch.全頭型)を用いて調べ、implicitな運動の構成に相当すると考えられるタイミングに運動前野および下頭頂葉に信号源を推定した。

研究成果

• [文献書誌] Y.Iwamura: "Bilateral receptive field neurons in the postcentral gvrus:two hands meet at the midline." Perception,memory and emotion:frontiers in neuroscience,Pergamon,ed.T.Ono,et al.33-44 (1996)
• [文献書誌] S.Wang,: "Optical imaging of functionalorganization in the monkey inferotemporal cortex." Science. 272. 1665-1668 (1996)
• [文献書誌] K.Tanaka: "Representation of visua features of objects in the inforotemporal cortex" Neural Networks. 9. 1459-1475 (1996)
• [文献書誌] H.Komatsu: "Surface representation in the visual system" Cognitive Brain Res.
• [文献書誌] 大野裕史: "運動認知に関わる神経細胞の反応の大きさと運動速度認知との関連" 信学技報. NC95-187. 247-254 (1996)
• [文献書誌] O.Hikosaka: "Activation of human pre-supplementary motor area in learning of scquential procedures-a functional MRI stuey" J.of.Neurophysiology. 76. 617-621 (1996)
• [文献書誌] S.Miyauchi: "Missing anditory stimuli activate the primary and associative auditory cortices:combining MEG with FMRI studies" Visualization of Information Processing in the Human Brain:Recent Advances in MEG and Functional MRI. EEG Suppl.47. 233-239 (1996)
• [文献書誌] S.Makioka: "Internal representation of two-dimensional shape" Perception. 25. 949-966 (1996)
• [文献書誌] K.Miura: "A computational model for the extraction of really moving obejets from the entire retinal image flow" Pro.of International Couference on Neural Information Processing. 1. 438-443 (1996)
• [文献書誌] 川道拓東: "メンタルイマジェリーにともなう脳磁気測定" 第11回生体生理工学シンポジウム論文集. 421-424 (1996)
• [文献書誌] H.Ando: "3D Obiject recognition using bidirectional modular networks" Receut Developments in Computer Vision ed.S.Z.Li Springer-Verlag. ACCV'95. 467-475 (1996)