研究課題/領域番号 |
08303002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
八木 紀一郎 京都大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (30116511)
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研究分担者 |
宇仁 宏幸 京都大学, 経済研究科, 助教授 (90268243)
清水 耕一 岡山大学, 経済学部, 教授 (00235649)
大田 一廣 阪南大学, 経済学部, 教授 (70185263)
若森 章孝 関西大学, 経済学部, 教授 (60067725)
斉藤 日出治 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (10186950)
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キーワード | 二重の承認 / ミクロマクロ・ループ / 重層的な調整 / 賃労働関係 / 言説の構造 / ソシエタルパラダイム / 交換理論 / 市民社会・国家論 |
研究概要 |
今年度は助成の最終年度であり、研究報告書の作成をにらみつつ研究にあたった。 第一の成果は、社会学者や心理学者との交流の上に、規範(正統性)と利害(共感)の二重の承認という理論構図を、社会的および経済的交換論を用いて、相互作用の領域にまで具体化したことである。これは、行為の理論に社会性を取り込むことによって、制度の政治経済学の基礎づけに資するものである。 第二の成果は、個と全体を媒介するミクロマクロ・ループ論の構造の解明と制度経済学におけるその具体化が追究されたことである。合理的経済人の想定から出発する制度分析はゲーム理論を取り入れた応用ミクロの観を呈しているが、ミクロの行為のマクロ的な基礎を求めることも必要である。しかも、このマクロな関係の中には、社会構造や権力構造、そして言説の構造も入るのである。今年度の研究では、市場と組織による重層的な調整、労働者の主体性を基礎においた賃労働関係とそれを基底においた技術革新の方向の分析、制度の束としての企業論という方向で経済理論への具体化がおこなわれた。 以上の二つを基礎として、社会的に編成された空間を内蔵した市民社会論の再構築がおこなわれ、ある程度、政策論の領域にまで達したことが第三の成果である。そこでは、個人のアイデンティティのあり方を規定する「ソシエタル・パラダイム」が、行動および社会関係に影響し、経済および政治機構の作動様式を規定する。また、こうした市民社会・国家論に関連して、社会保障や労働・社会政策のあり方についても新しい視点が提供された。
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