研究課題/領域番号 |
08308030
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
小島 覚 東京女子大学, 文理学部, 教授 (80115138)
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研究分担者 |
佐藤 冬樹 北海道大学, 農学部・附属演習林, 助教授 (20187230)
中田 誠 新潟大学, 農学部, 助教授 (80217744)
武田 博清 京都大学, 農学部, 教授 (60109048)
及川 武久 筑波大学, 生物科学系, 教授 (70011682)
木田 秀次 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60252417)
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キーワード | カルシウム / 物質循環 / 生態系 / 冷温帯落葉広葉樹林 / 環境変化 / 植生・土壌系 / 地形的位置 / 渓流水の化学性 |
研究概要 |
平成10年度は、本研究の最終年度である。研究代表者小島を中心にして、研究分担者らが協力して野外調査、資料分析、集計を行い、本研究の成果報告書を作成した。分担者佐藤は、北海道大学農学部附属天塩地方演習林のある集水域においてカルシウムの収支を測定し、域外から空中飛散物として供給されるカルシウムの重要性を指摘した。分担者中田は、新潟県の山地において、地形的位置および季節の違いによる渓流水の化学性変化を分析し、渓流の水源域において化学性は季節変動が大きいこと、および水は酸性が強まることを明らかにした。分担者武田は、京都大学農学部附属芦生演習林において落葉の分解実験を継続し、分解進行に伴う分解葉の化学性の変化を分析した。小島は、平成9年度に引き続き、京都大学農学部附属芦生演習林における地形と植生および土壌特性について調査を行い、地形による植生の相違が土壌の化学性とくにカルシウム量と密接に関係していることを明らかにした。また主要樹種の幹材および樹皮の化学性においても地形的位置による違いが認められた。それらの分析値に基づいて、土壌、植物体、落葉、立木などに蓄積されている単位面積あたりのカルシウム量を算定した。これらのことから、湿潤な気候のもとにある日本の冷温帯林では、常に溶脱により土壌中の塩基は失われる状態にあることから、生態系は本質的に塩基欠乏の状態にあり、カルシウムの供給量が植物種の分布に決定的な影響を及ぼすものと思われた。またカルシウムの供給豊富な立地に生育する植物は、比較的多量のカルシウムを吸収し体内に蓄えるとともに、落葉技の形でそれを土壌に還元、カルシウムの循環を活発化するものと考えられた。平成11年1月、本研究参加者全員が、東京女子大学文理学部に集まり、本年度の成果報告を行うとともに、本研究の完結年度にあたるため、成果報告書の作成について討議した。
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