研究概要 |
今年度は、新たに芳香族性が期待される新規の6パイ電子系シリレンの生成を目的とし、その前駆体として9-シラ-9,10-X-ジヒドロアントラセン誘導体(X=CH_2,O,NMe)の合成を行い、光反応によるシリレンの発生およびXによる反応の相違について検討した。9-シラ-9,10-ジヒドロアントラセン誘導体の光反応を、捕捉剤としてエタノールあるいはトリエチルシランをもちいて行ったところ、-CH_2-,-O-架橋した誘導体の場合のみシリレン捕捉生成物が得られたが、NMe架橋した誘導体では生成しなかった。シリレンは励起一重項から、またシリルラジカルは励起三重項から生じることが知られており、NMe架橋誘導体の光反応においては、必要な活性化エネルギーが得られずシリレンは生成しないと考えられる。したがって10位のヘテロ原子がジヒドロシラアントラセンの光反応に大きな影響を与えていることが分かったが、新規6パイ電子系シリレンの生成を目的とし、新たなシリレン前駆体としてシラシクロプロパンの合成と反応について検討した。 また今年度はあわせて、ケイ素-ケイ素二重結合が共役したテトラシラ-1,3-ブタジエンの存在はこれまで確認されていない。今回、新たにテトラシラ-1,3-ブタジエンの生成について検討した。方法論的には、ヘキサメチルテトラシラン-1,1,4,4-テトライルの転位によるテトラシラ-1,3-ブタジエンの生成させようとするものである。前駆体であるシラノルボルナジエン誘導体を封管中2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン存在下で熱分解反応させたところ、反応後、主生成物として、1,4-ビスシリレン、ジシレニルシリレンおよびテテラシラブタジエンがブタジエンの捕捉生成物が得られた。
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