研究概要 |
拡大サイズを持つかご分子の合成. オルトケイ酸エステルの加水分解反応を利用して,末端置換基が水素であるかご分子を合成した.二重4員環構造を持つかご分子の他に,二重5員環構造及び二重6員環構造を持つ者が同時に生成することが明かとなった.高速液体クロマトグラフィーによってこれら拡大サイズを持つかご分子が単離生成できることが明らかにされた. 拡大サイズを持つかご分子中への水素原子の包接と包接水素原子の挙動の検討. 二重5員環構造及び二重6員環構造かご分子は結晶状態であり,室温でのγ線照射では水素の包接量は極めて微量であることを確認した.77Kでの照射によって水素の包接が進行することが明らかになった.包接水素は,140〜200Kの温度でかごから放出され,水素によるESR信号が消失する.77〜140Kでの温度範囲ではESR信号は可逆的に変化し,水素は安定に保持されていることが明らかになった。 長鎖置換基を持つかご分子の合成と精製. 末端置換基を持たない二重4員環構造を持つイオン対型かご分子に対して置換基導入条件を変えて,長鎖炭化水素を導入することに成功した.また,高速液体クロマトグラフィーによって効率よく精製できることを明らかにした.得られたかご分子は室温で液体であり,非極性有機溶媒に高い溶解性を示した。 長鎖置換基を持つかご分子の水素の水素包接と包接水素原子の挙動. 77K及び室温においてγ線照射によって水素の包接が進行することが明らかになった.包接量は室温での照射による法が多いことが確認され,媒質中での生成種(水素原子あるいは溶媒和電子)の拡散が制御要因であることが示唆された.水素原子由来のESR信号に対する共存酸素分子の影響は,結晶性固体に比較して格段に増加していることが明らかにされた,当初の予測が正当であったことが確認された. 水素包接機構の解明と新規包接法の開発. 上記液相分子に対する研究から,溶液相に対する照射が有効であることが明らかとなった.この結果を基にして,溶媒の効果を検討した結果,非極性溶媒とプロトン性溶媒で包接機構が異なること,溶媒和電子の拡散の制御が重要であることを突き止めた.
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