研究概要 |
1.高強度鋼を10^8回程度の繰返しまで疲労試験すると,S-N曲線に2段の折れ曲がり現象が現れることがある.このような場合には√<area>パラメータモデルによる微少欠陥や介在物起点の疲労強度の推定がやや危険側になるとの指摘がある.しかし,S45C材の焼入れ,焼もどし材の引張圧縮疲労試験をN=5×10^8程度の超長寿命域まで行い,基地組織のビッカース硬さHV,介在物の寸法√<area>,および残留応力分布を注意深く調べることにより,√<area>パラメータモデルによる高強度鋼の超寿命域(N_f>10^7)における疲労限度の推定が妥当であることを明らかにした. 2.極値統計による介在物の√<area>_<max>の推定において,√<area>_<max>分布が極値確率紙上で直線性を示さない場合には,介在物検査基準面積を十分大きくとる必要があることを明らかにした. 3.浸炭,窒化等の表面処理を行った材料では,表面と内部で疲労強度が異なる.このような材料の疲労強度に及ぼす介在物の影響を定量的に評価するため,SCM435浸炭窒化・焼入れ焼きもどし材を用いて超長寿命域の引張圧縮疲労試験を行った.表面では高硬度で圧縮の残留応力が存在するため破断起点はすべて低強度の内部に存在する介在物であった.√<area>パラメータモデルを用いて疲労限度の定量的評価を行い実験結果とよく一致することを明らかにした. 4.清浄度を高め介在物を極端に小さくすると介在物や欠陥以外の因子が疲労破壊の原因となる.清浄度を上げると疲労強度の改善にこのことを考慮しなければならない.そのような材料の例としてSUS630鋼を用い回転曲げ疲労試験を行った.疲労過程の連続観察の結果破壊起点のほとんどが組織内に存在する低硬度組織のδフェライトであった.さらにδフェライトの寸法の違いが疲労強度のばらつきの原因であることを明らかにした.したがって,SUS630鋼では介在物の制御とともにδフェライトの寸法制御が必要である
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