研究概要 |
東京大学医学部附属病院では平成8年1月より生体肝移植を開始し平成9年12月までに27例を施行した。Recipientの年齢は平均8.2歳(8ケ月〜53歳)であり、男性14例、女性13例であった。原疾患は胆道閉鎖症22例、原発生硬化性胆管炎1例、原発性胆汁鬱滞性肝硬変1例、Alagille症候群1例、肝硬変・難治性食道静脈瘤出血1例、劇症肝炎1例であった。ドナーは24例で両親、1例で祖母、1例で兄、1例で娘であった。ドナーは全例順調に回復した。レシピエント27例中1例は脳出血のため死亡したが、残り26例が生存中である。免疫抑制療法はFK506+ステロイドを基本として行っている。移植後順調にT-BIL,GOT,GPT,ALP,G-GTPが低下している過程で、これらT-BIL、肝酵素、胆道系酵素の急激な再上昇が見られた時、急性拒絶と診断して治療を開始することにした。このような診断基準のもと7例で1回、1例で2回急性拒絶が診断されたが、残り19例では急性拒絶は起こらなかった。肝生検では肝グリソン内の著名な細胞浸潤、胆管破壊、門脈の内膜炎が認められた。サイトカイン(TNF-a,IL-2,IL-4,soluble IL-2 receptor,IL-6,IL-10)は5例で測定できた。対象が生後10ケ月の位の場合が多く、十分量の採血ができないことが予定していたサイトカインの測定ができない原因となった。5例では急性拒絶が見られなかったが、移植後、TNF-a,IL-4,IL-10,IL-6は有意な変動を示さなかった。一方、soluble IL-2 receptorは移植前に比較して増加傾向があり、移植後の免疫状態の変動を反映する可能性が示唆された。apoptosisについては測定を開始しており、soluble IL-2 receptorを中心として今まで施行した30例において測定し急性拒絶との関係を検討中である。
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