研究分担者 |
河原崎 秀雄 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (60115475)
針原 康 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (10189714)
窪田 敬一 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (70260388)
高山 忠利 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授
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研究概要 |
東京大学医学部附属病院では平成8年1月より生体肝移植を開始し平成11年6月までに63例を施行した。Recipientの年齢は平均14.9歳(8ヶ月〜62歳)であり、男性27例、女性36例であった。原疾患は胆道閉鎖症40例、原発性胆汁鬱滞性肝硬変8例、肝硬変7例、Alagille症候群2例、その他5例であった。レシピエント63例中60例が生存中である。免疫抑制療法はFK506+ステロイドを基本としているが、状況に応じてCyAを使用している。移植後順調にT-BIL,GPT,ALP,G-GTPが低下している過程で、T-BIL、肝酵素、胆道系酵素の急激な再上昇が見られた時、急性拒絶と診断し治療を開始するが、必要あれば肝生検を施行し病理学的に急性拒絶を診断した。このような診断基準のもと52例を検討すると、15例で急性拒絶が診断されたが、残り37例では急性拒絶は起こらなかった。肝生検では肝内グリソンの著名な細胞浸潤、肝管破裂、血管内膜炎が認められた。サイトカイン(TNF-a,IL-2,sIL-2receptor,IL-6,IL-10)は5例で測定できたが、急性拒絶時にsIL-2 receptorのわずかな上昇が見られたのみで急性拒絶に特異的なサイトカインの変動は認められなかった。一方、末梢血液中の好酸球数、肝機能障害と急性拒絶の関係を33例で検討したが、肝機能障害が見られた29例中好酸球数増加が見られたのは23例で急性拒絶の見られた7例は23例に含まれていた。従って、末梢血液中の好酸球数増加と肝機能障害は急性拒絶を示唆する有力な情報であり、末梢血液中の好酸球数増加のない肝機能障害では急性拒絶の可能性が少ないと考えられた。以上より、急性拒絶の診断はT-Bil,GOT,GPT,ALP,G-GTPの上昇、それに伴う末梢血液中好酸球数増加が有用な指標となり、サイトカインの変動は特異的でないと考えられた。
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