研究概要 |
人間は視線を動かして眼球の中心である中心=に視対象の像を投影するという注視行動をするが、本研究では注視点の移動、その速度、注視時間を計測して顔の表情認識を分析した。7つの基本的感情(嬉しさ、興味、驚き、恐怖、嫌悪、怒り、悲しみ)を表す各表情の静止画像における眼球運動の分析を行ない、それが表情判断とどのように関連しているかを検討した。 10名の被験者を使って、線図形で描かれた7つのシェマテックな顔の表情をコンピュータのモニターに提示して表情判断の正答率と反応時間を測定した。眼球運動は隔膜反射法で測定した。刺激は顔の輪郭とblow,eye,nose,maouthからなり、特徴的な表情を表すために、blow,eye,mouthを変化させた。それらを系統的にマスクし、表情判断にどの部分が効果を及ぼすかを49条件で検討した。その結果、eyeが存在すると表情判断には効果がなくても、眼球運動は必ずeyeに停留した。また、blow,eye,mouthの部分的提示の場合には必ず提示された構成部分に停留点があったが、mouthのみの顔を提示されると、なにもない顔の中心部分に眼球運動の停留点があった。blowのみを提示すると表情surpriseの判断の正答率は低下したが、表情sadの判断はblowが重要な役割を果した。また、表情angryはblowとmouthの効果が大きかった。さらに、eyeは表情disgustの判断に大きな影響を及ぼしていた。さらに実際の表情の合成写真を使った実験でも同様の傾向が得られた。 これらの成果は1997年の日本視覚学会大会、第61回日本心理学大会、第20回ECVP(European Conference for Visual Perception in Helsinki)でそれぞれ発表が予定されている。
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