研究課題/領域番号 |
08451082
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
曽田 三郎 広島大学, 文学部, 助教授 (40106779)
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研究分担者 |
松重 充浩 広島女子大学, 国際文化学部, 助教授 (00275380)
水羽 信男 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50229712)
金子 肇 下関市立大学, 経済学部, 助教授 (70194917)
楠瀬 正明 広島大学, 総合科学部, 教授 (40033518)
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キーワード | 国民統合 / 地方自治制度 / 対外主権 |
研究概要 |
一般に国民統合の達成には、中央と地方の政治制度の整備、および相互の連携の実現が一つの重要な要件になる。本研究はこのような見地から、近代中国における地方自治制導入と国民統合達成との関係を明らかにすることに目的をおき、清末時期、北京政府時期、国民政府時期それぞれについて分析し、以下のような成果を得た。 1地方自治制度がはじめて中国に導入されたのは、20世紀に入ってからの清末時期である。19世紀以降、対外的主権擁護の必要性が認識され、そのための方策が模索されるようになる。とくに日清戦争以後に特徴的なことは、対外的主権擁護のためには国民の統合が不可欠であるという考えが普及し始めることである。こうした考えが現実の政治の場で具体化されるようになるのは20世紀に入ってからであり、議会組織の導入が追求されるようになる。議会組織は中央政治の場においてのみならず、州県政治や城鎮郷政治の場においても導入され始めた。 2清朝の崩壊には外部的なもののみならず、中央と地方の政治の有効な連携の実現によって国民統合を達成する。その具体的手立ての欠如という内部的なものにも原因があった。中華民国の成立はあらためて国民統合実現のための制度的整備という課題に直面することになったが、地方自治は制度としては定着することなく、各地域、業界の事実上の自治へと潜在化していった。 3国民政府の時期には、日本との対抗、日中戦争の遂行のために新たなレベルでの国民統合が必要とされるようになった。国民政府時期にはあらためて地方自治制の導入が具体化するが、それは戦時に対処できる国民統合のための有効な方策を提示しない以上、当面する最重要課題に応えられず、また国内政治における主導権も保持できなかったからである。
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