研究概要 |
毎年,大型台風に見舞われるわが国では,強風に対する高層ビルや長大橋のような大規模な構造物の安全性の確保が重要な課題とされている.従来から,安全性を確保するため,振動を制御するための制御システムとしてフィードバック制御が提案されてきたが,この方法は負荷や外乱を受けてから制御をかける受動的な遅れ制御であり、即応性に限界があることが指摘されている.これに対して,近年様々な先端技術を利用した構造物のアクティブ制御が注目を集めている.これは,強風によって振動が引き起こされる構造物に対して,エネルギーを供給して積極的に振動を制御しようとする能動的な考え方に基づく制御方法である.このように能動的な制御を実現するためには,制御対象に対する負荷や外乱の変化を事前に予測することが重要な課題であり,過去の長期的な負荷や外乱を計測して,自己回帰分析やカルマンフィルタなどを用いる方法が提案されている.しかし,これらの方法では対象をモデル化する際のパラメータの決定など,いくつかの問題点が指摘されている. 本研究では,アクティブ制御を実現するための重要な課題である予測問題に対して,様々な時系列データの短期予測に使われているカオス理論の適用可能性を検討する.まず,カオス理論の特徴について,ロジスティック写像を用いて簡単に説明する.実際の時系列データの短期予測へのカオス理論の適用では,テセレーション法や局所ファジィ再構成法など様々な方法が提案されている.本研究では,これらの方法の中から,テセレーション法を用いた短期予測について検討することとし,C言語を用いてシステムを開発した.実際に測定された平穏時や台風時の風速データを用いて,開発したシステムによる短期予測を行い,予測の精度などの面からカオス理論の適用可能性について言及する.
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