Co-Pなどの誘導共析現象ではH_3PO_3分子が陰極に吸着し還元され金属原子の表面拡散を阻害する。我々はH_2ガス発生速度と多成分イオンの物質移動速度から陰極表面のpHを計算し、膜のP濃度と関係ずけて誘導共析現象を理解することが出来た。化合物半導体の電析過程も非晶質合金中のメタロイドと同様に構成成分であるカルコゲンは水素発生阻害元素なので共析により水素ガス発生が阻害され誘導共析現象が認めらる。TeO_2のCdSO_4溶液中の溶解度を決定した。またTeO_2濃度が異なるCdSO_4溶液をその界面を乱すことなく静かに接触させ、HTeO^+_2を拡散させて拡散係数の濃度依存性を決定した。その後、回転電極装置を用いてNi基板上にCdTe薄膜を種々の過電圧下で成長させ組成や電流効率を決定した。薄膜組成は原子吸光分析法によりCd及びTeを定量分析した。それぞれの元素の析出の電流分担率を計算した。それらの値と全電流値の差から水素ガス発生に消費された電流分担率を測定した。また薄膜の微細構造をX線回折により解析した。拡散係数や動粘性係数などの値を用いて回転電極近傍のイオンの移動速度を計算した。得られた電極表面のpHの値から陰極表面のHTeO^+_2の陰極表面濃度を求め、薄膜中のCdやTe濃度と関連ずけて誘導電析の機構や薄膜成長過程に関する検討を行った。今後、これらの結果をまとめるとともに、さらに電子顕微鏡観察を行い、表面状態をオージェ電子分光装置で解析したい。これらの研究が全て順調に進行すれば実際にITO等の基板上に析出させ分光器で透過率を測定したり膜の比抵抗なども測定してみたい。
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