大豆種子の主要貯蔵タンパク質であるグリシニンとβ-コングリシニンの構造と品質との相関を解明することが本研究の目的であり、今年度は、グリシニンの前駆体であるプログリシニンの構造解析と成熟型グリシニンの結晶化及びβ-コングリシニンの構造解析を試みた。この時、本年度購入したHPLCを用いて目的タンパク質を精製した。 1.プログリシニンA1aB1bの構造解析:プログリシニンA1aBb1のX線結晶構造解析を重原子同型置換法で進め、2.8Åレベルでの高次構造を決定しつつある。 2.成熟型グリシニンの結晶化:普通品種の大豆種子中には、サブユニット組成が不均一なグリシニンが存在しており、結晶化が困難である。しかし、変異を導入することによって、均一サブユニット組成のグリシニンを持つ大豆が開発された。この変異大豆を入手し、グリシニンを精製することによって、X線結晶構造解析可能な結晶を得ることに成功した。 3.β-コングリシニンの構造解析:βコングリシニンを構成する3種(α、α′、β)のサブユニットに対するcDNAをクローニングし塩基配列を決定した。この結果、従来α′サブユニットのみが持つと考えられていた繰り返し配列が存在しないことを見出した。各サブユニットの大腸菌発現系を構築し、均一サブユニット組成の組み換え型β-コングリシニンを調製した。これらの結晶化を試みたところ、α、βサブユニットに関して成功し、特に、βサブユニットはX線結晶構造解析可能な結晶が得られた。そこで、同種タンパク質であるタチナタマメ豆のカナバリンの構造データをサーチモデルとして分子置換法による構造解析を進め、2.4Åレベルでの高次構造を解明しつつある。
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