研究概要 |
【目的】内皮障害によるNO産生能の低下は,血管トーヌスの亢進や血小板の凝集などを介して動脈硬化の進展や血管攣縮に関与する。ecNOOS発現AAVベクターを作成し,内皮剥離血管に遺伝子導入を行い,血管収縮反応への影響を検討する。【方法】Bovine ecNOS発現AAVを作製した。ecNOSの発現はWestern blot法,酵素活性は[^3H-L-arginineから[^3H]-L-citrulineへの変換能により解析した。Ex vivoにて摘出ラット大動脈にecNOS遺伝子導入を行い,血管の等尺性張力を測定した。【結果】DNA dot blot法に用ウイルス力価は,2.1×10^<10>PU/10cm dishであった。ecNOSの発現はWestern blot法により135KDaのバンドとして認められた。ecNOS酵素活性の指標である[^3H]-L-citrulineの合成能は,コントロール群263.9±152.5pmol/g/minに比しecNOS遺伝子導入群では705±91pmol/g/minと有意な増加を認めた。30mM K+による血管収縮反応の検討では,内皮を剥離すると30mM K+によるラット大動脈の収縮反応は増強したが,内皮剥離血管にecNOS遺伝子を導入すると,内皮を剥離していない血管と同程度まで収縮反応は抑制された。しかし,L-NMMA存在下では,このecNOS遺伝子導入による収縮反応の抑制効果は消失した。【考案】ecNOS発現AAVベクターを作成し,ラット大動脈にex vivo遺伝子導入を行った。内皮剥離(ecNOS阻害)に伴う血管収縮性の亢進は,AAVベクターによるecNOS遺伝子導入にて正常化した。このことより,ecNOS発現AAVベクターは,動脈硬化や血管攣縮の遺伝子治療に有用であると考えられる。
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