研究課題
基盤研究(A)
本年度の本研究の目的は、大量に排出される第3紀泥岩を盛土等へ有効利用するため、泥岩砕石による高盛土のスレ-キングに伴う圧縮変形特性を調べることにある。ここでは特に、設計をふまえて、砕石の粒度分布を変えた砕石集合体試料を作製し、砕石自身の飽和度も変化させて、圧縮特性およびせん断特性を調べた。さらに、実験で得られた泥岩砕石集合体の挙動を説明するため、新たに「上負荷面カムクレイモデル」を開発し、実験結果との比較を行った。このモデルにより、高盛土の数値解析を行うことができるようになるのである。以下に得られた結論を述べる。(1)泥岩砕石集合体の水侵一次元圧縮特性(1)ゆる詰め供試体の場合、砕石自身の飽和度によらず、スレ-キングにより沈下が起こる。(2)沈下量〜時間関係を見ると、乾燥させた砕石試料の方が短期的に沈下を起こし、飽和試料の場合は、自然堆積粘土が示す「2次圧密」のように長期的に沈下が進行する。(3)粒径の幅を広げた集合体の場合、圧縮沈下は即時に起こり、その後の沈下は起こらない。(4)いかなる試料においても、最終的には練り返し泥岩の正規圧密線にまで間隙比が到達する。(2)泥岩砕石集合体の一定荷重せん断特性(1)砕石同士の間隙に水がない場合は、高い強度を示す。また、粒径の幅を広げた集合体の場合、強度の発現が早い。(2)しかし水が入ると、スレ-キングによる進行性破壊が起こり、特に乾燥した試料の場合、強度劣化は顕著である。(3)上負荷面カムクレイモデルによる室内試験のシミュレーション(1)泥岩砕石集合体の水侵一次元圧縮試験において、約24時間後に過剰水圧が再度発生した。この結果は上記モデルからも表現する事ができた。すなわち二重構造を有する泥岩砕石集合体の長期沈下や「構造」を持つ自然堆積粘土の2次圧密は、提案するモデルで表現できたことを意味する。(2)三軸圧縮試験において、有効応力パスが限界状態線の下側で軟化を示した。この結果は、やはり提案するモデルで説明できた。このことから、提案する上負荷面カムクレイモデルで、二重構造を有する泥岩砕石集合体の複雑な挙動を表現することができることを示した。このモデルは、将来、「構造」を持った自然堆積粘土の挙動の表現もできることを示唆している。
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