研究課題/領域番号 |
08557040
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研究種目 |
基盤研究(A)
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応募区分 | 試験 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 紀夫 大阪大学, 医学部, 講師 (00144478)
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研究分担者 |
三田 英治 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
結城 暢一 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
竹原 徹郎 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
笠原 彰紀 大阪大学, 医学部, 助手 (70214286)
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キーワード | B型肝炎ウイルス / 単鎖抗体 / sFv / HBc抗原 / 遺伝子治療 |
研究概要 |
B型肝炎ウィルス(HBV)の細胞内増殖過程において、ウィルス粒子内のDNAはpregenomeRNAがcore粒子内で逆転写されることにより生成される。この点に着目してcore粒子の形成要素であるHBV core抗原(HBcAg)に対する単鎖抗体(sFv)を細胞内で発現させることによりcore粒子の形成を阻害し、HBV DNAの生成を抑制すること目指して下記の検討を行った。HBcAgに特異的に結合するsFvは、HBcAgで免疫したBalb/cマウスの脾臓から抽出したRNAよりRT-PCR法にてsFv cDNAライブラリーを作成し、phage displayでHBcAgに対するELISAを用いてスクリーニングを行うことによって得た。このsFv遺伝子及び対照としてのHBcAg非結合性sFvの遺伝子をSV40プロモーター下流に挿入した発現ベク-タを作成し、B型肝炎ウィルス遺伝子が組み込まれウィルス粒子を産生する肝細胞株HB611にtrasfectを行い、ベクター上のzeosin耐性遺伝子を用いて選択してそれぞれのsFvを産生するクローンを得た。それらのクローンについて増殖速度に有意差は無かった。Southern blot analysisにて、これらのクローンから抽出したDNA中のHBV DNA量を検討したところ、HBcAg結合性sFv産生クローンにおいてのみ、環状二重鎖、直鎖状二重鎖、直鎖状一本鎖HBV DNA産生の抑制を認めた。また、これらのクローンについてNorthern blottingによるsFvおよびHBV RNA量の検討では、HBcAg結合性、非結合性sFv発現ベクターを導入したクローン間にpregenomeRNA量及びsFv産生量の差はなかった。このことから、HB611において、抗HBc sFvによるHBV DNA量の抑制効果は、pregenomeRNAからDNAへの逆転写過程で起こっていることが明らかとなった。今回の検討結果は、抗HBc sFvを用いた新たな抗HBV療法の可能性を示すものと考えられた。
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