研究分担者 |
藤本 成明 広島大学, 原爆放射能医学研究所・予防腫瘍, 助教授 (40243612)
梅村 隆志 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性生物試験研究センター・毒性部, 主任研究官 (50185071)
平林 容子 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性生物試験研究センター・毒性部, 主任研究官 (30291115)
高木 篤也 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性生物試験研究センター・毒性部, 主任研究官 (00179417)
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研究概要 |
発生生物学の進展に伴い、細胞一つがマウスの一個体に相当する性質を持つ胚性幹細胞(ES細胞)の維持が比較的容易になり、このES細胞の生殖・発生毒性試験への応用は極めて有用であると考えられる。そこで本研究では、この胚性幹細胞を用いた、鋭敏かつ短時間に試験可能な初期発生毒性検出系の開発をめざす。今年度はES細胞を神経系細胞に分化させることが知られているレチノイン酸及び種々のホルモン様物質の神経系細胞分化への影響検討した。ES細胞を浮遊培養で2日間培養して凝集塊を形成させ、その2日間にAll-transretinoic acid(ATRA)(0.5μM)、9-cis-retinoic acid(cis-RA)(0.5μM)、3,3',5-triiodo-L-thyronine(T3)(1nM)、17β‐estradiol(l7BE)(10nM)、ATRA(0.5μM)+cis-RA(0.5μM)、ATRA(0.5μM)+T3(1nM)、ATRA(0.5μM)+17BE(10nM)、Di(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)(10,100 or l000μM)またはKC400(0.1,lor10μM)を培地に添加した。その後、細胞を細胞培養用皿に撒き、7日間培養後、ニューロン及びアストログリアの指標としてNeurofi1ament(NF)及び Grial Fibrillary Acidic Protein(GFAP)の蛋白レベルをそれぞれウエスタンブロット法にて測定した。その結果、NFレベルの増加はATRA、cis-RA群で認められたが、対照群、T3またはl7BE群では認められなかった。このATRAによる増加にl7BEは影響を及ぼさなかった。GFAPレベルはATRA及びcis-RA群で増加したが、T3 nor l7BE群では増加しなかった。さらに、GFAP抗体に反応する蛋白の発現が、DEHPとKC400群で認められた。一方、細胞像は各群とも非常にchaoticであり、肉眼的判別は困難であった。以上の結果、種々の分化マーカーを用いることにより発生毒性の解析系にES細胞が有用であると思われる結果を得た。さらに、遺伝子導入変異検出系に関してはgpt遺伝子導入ならびに組み替え体選別のための条件について前年度に引き続き検討を行った。
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