近年の新規学卒労働市場は、就職協定の廃止をふまえて新しい段階に入っている。大卒・短大卒女子については、今日の経済環境下で就職難が問題となっているが、中長期的な観点からも、採用後の企業内での処遇制度がどのように革新されつつあるか、女子の活用・戦力化がどう進展しつつあるか、また大学・短大にどのような教育が期待されるか、注目される。本研究では、まず7月から8月にかけて、日本労働研究機構の大卒就職研究会の研究成果を再検討し、必要な調査研究の枠組みの検討を行った。 つづいて、この研究枠組みに関して、欧州の研究者レビューを受けた。すなわち、高等教育と雇用に関して、国際的な比較研究がおおく展開されており、女子の雇用と教育を検討する本研究においても、国際的に比較可能な調査を実施することが重要であった。このための出張として、11月16日〜11月27日までドイツ・カッセル大学「高等教育・雇用研究所」のタイヒラ-所長、イギリス公開大学「教育の質サポートセンター」のブレナン所長を始めとして高等教育関係者を訪問した。その結果、日本でこれまで注目されてこなかった「就職後の職業生活の中での教育と職業との接続関係」を究明すること、欧州では選抜性に関する検討を行うことが、相互に比較可能な枠組みを発展させる研究として有意義であるとのコメントを得た。 企業の大卒・短大卒の採用状況については、リクルート・リサーチ社の各種調査資料を収集し検討した。また、1月には、同社の関係者を招致し、大卒・短大卒女子の現状や企業の採用方針に関わる諸問題点の検討会を行った。 九州地区で一定数以上の大卒者・短大卒者を採用している企業600社を対象として、郵送調査を1997年3月に実施した。主な調査項目は、企業の概要、新規学卒採用実態、雇用管理方針、とくに女子の活用・戦力化のための諸方策、男女・学歴別の定着率や昇進率の実態とその要因、職場での技能と高等教育で習得する知識・技術との関連、企業から高等教育への要望などである。
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