本研究課題においては、近年の新規学卒労働市場における、とくに就職協定の廃止をふまえた新しい段階における、雇用と教育をめぐる関係の展開に注目し、特に大卒・短大卒女子に焦点をあてて、文献研究、統計的データによる戦後の構造変動分析、および企業の採用活動調査の実施・分析という3つの方法でアプローチした。第1年次には、先行研究をレビューし、本研究計画についてのレビューを受けたのち、大卒・短大卒女子を一定数以上雇用している九州地区の企業603社を対象として郵送調査を実施した。第2年次の本年度は、この調査の有効回収票100を、次のような観点から分析をすすめた。1)学卒者を雇用する際の大卒・短大卒女子の採用比率の高い企業のプロフィールの把握、2)採用後の高学歴従業員の処遇について、総合職・一般職等のコース制の設定とコース別の採用人員の内訳、3)その他高学歴女子従業員の活用のための雇用管理方策の範囲、4)大卒・短大卒女子の早期離職率の大卒男子との比較、5)昇進昇格において、男女、大卒-短大卒、基幹的-非基幹的な職掌という差異の応じて、どの段階から格差が生じているのかなどの点である。 昇進昇格についての知見をみると、3分の1の企業は「大卒男子と大卒女子、短大卒女子いづれの間でも昇進・昇格の差はない」としているものの、他方で3分の1弱は、「大卒男子と大卒女子との昇進・昇格の差はない」としており、逆にいえば、これらの企業では大卒女子と短大卒女子の間の差があることを認めている。また残り3分の1強は、同じ総合職等の「基幹的な職掌の大卒者でも男女で昇進・昇格の差が生じている」と回答している。雇用機会均等法施行からすでに10年になるけれども、昇進昇格の差は、依然として大きく残っていることが明らかになった。また、この点についての人事担当者の解釈枠組みを検討してみると、女子従業員の個人的な問題として昇進意欲や転勤等の異動希望に関わる問題を指摘しているとともに、基幹的職掌への採用が少ないという雇用管理側の問題を指摘する声も2割以上見られた。
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