本研究では、現代日本語における不規則動詞に着目して、全国的な実態調査を行う。また、不規則動詞を国語史的資料の中に位置づけて、日本語文法体系について理論的整備を図る。現在日本の方言は急速な消滅の趨勢にあり、記録の最後のチャンスである。不規則動詞はその性格上、従来の方言集にはほとんど記録されない。例えば「行く」の音便形は促音便である点が不規則である。またオッシャル、ナサルなどは、マスへの接続と命令形がイになる点が不規則で、同様に呉れるの命令形クレも一段活用としては不規則である。現代日本語の不規則動詞の方言的背景について、効率のよいデータ収集を図り、コンピュータで処理して分析し、地図集として公刊する。限られた人材・資金・時間で効率よく全国分布データを収集するために、学校・大学へのアンケート方式を採用する。また、集計に東京外国語大学の大型電子計算機を利用する。 A.大学生集合調査……全国主要大学に依頼するアンケート調査の準備のために、各種方言資料から不規則動詞のデータを集め、コンピュータにデータベースの形で集積している。B.沖縄調査……沖縄県では、不規則動詞の様相が国語史的に異なっている。また共通語化にもかかわらず、一部沖縄方言的な活用も見られる。現代の不規則動詞について典型的地域として沖縄県をとりあげ、面接による実地調査により世代的な変化の様相を探った。また沖縄方言についての様々な資料を収集した。
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