当初、享保14年版『新撰書籍目録』(京都、永田調兵衛刊)に載る書目をデータベース化する予定であったが、本研究のデータ整理用に購入したパーソナル・コンピュータとイメージスキャナを利用したOCRによるデータ入力がかなり有用であることが判明したので、慶応義塾大学斯道文庫編『江戸時代書林出版書籍目録』(井上書店刊、1963年)の索引遍全体をそのまま入力し、以後の基礎データとすることにした。本年のデータ作成作業の中心はこれであり、作業自体はほぼ終了している。来年度以降、このデータを各々の目録に振り分けながら、書名以外のデータを補いつつ調査・研究を進めていくことになろう。 また、すでにデータ化をすすめつつある享保14年版目録中の文学・歴史関係の書目については、国文学研究資料館所蔵のマイクロ資料を中心に調査を行った。この調査では、目録登載書目のなかに目録刊行時点ではまだ刊行されていないものがいくつか含まれていることが特に興味深く思われた。まだ、享保14年版目録についてのみの調査なので、他の目録にも同様の例が発見できるかどうか、また、そうした例が多くあらわれるのはどの分類項目であるのか等についてなお検討を続ける必要を感じているが、これらを手がかりにしていくことにより、書林編纂書籍目録の編纂資料に関して、ある程度の目安が得られるのではないかと考えている。 さらに、これらの書籍目録における書目分類項目と小説史・文学史の流れとの関係、あるいは目録に記載されている作者に関するデータの信憑性とその扱い方に関して若干の考察を行ない、雑誌・講座論文として発表した。
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