本報告書の大部分を占めるのは、享保14年京都永田調兵衛刊書籍日録に関する以下のデータである。 資料一 巻一〜三書名データ(csv形式) 資料二 巻四掲載書目データベース 資料三 『書林編纂書籍目録』書名索引ファイル(一部) いずれのデータも近いうちにインターネットで公開する予定である。 以上のデータに基づいて試みた考察の結果を以下に摘記する。 1、 享保14年以後に刊行された書物が享保14年目録に登載されている理由について 享保年間以後のたとえば宝暦頃の刊行となっているものは、初版がそれ以前に刊行されている可能性を考えるべきであろうが、享保15〜20年前後に刊行されたものは近刊情報を入手して掲載した可能性が考えられる。いずれにしても、さらにくわしい書誌調査と関連資料の探索を続ける必要がある。 2、 「仮名物草紙類」の位置づけ 巻四「仮名物草紙類」の項に掲出されている143点の書目の大部分を占めるのは今日浮世草子に分類される作品群であり、その過半は八文字屋刊(当然作者は江島其蹟である)のものである。このことは、しかし、「仮名物草紙類」イコール浮世草子であることを意味しない。浮世草子以外の書目もわずかながら収録されているからで、そのうちまとまっていて目立つのは遊戯関係書4点である。うち、3点は多賀谷環中仙のちので、いずれも、当時流行した「影絵」などの遊び方を解説した書物である。こういう書物が浮世草子と同じ「仮名物草紙類」に属する書物として扱われていることからすれば、今日浮世草子に分類される作品は我々の予想する以上に遊戯的な書物として認識されていることを意味していると思われる。これについても、なお、他の目録の例などについても考察をすすめる必要がある。
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