研究概要 |
1.まず,日本企業のマネジメント・コントロール(MC)の特徴について考察した。(1)日本的経営の構成要素のいくつかは日本的管理会計の特徴でもある。例えば「権限・責任・職務の範囲・評価の曖昧性」「現場中心主義」等の特徴がMCにどのような形で現れているかを確認した。(2)日本企業では実体管理を重視して会計数値によるコントロールも併用されてきた。MCシステムの下位システムは経済的・社会的条件により日米でかなり異なっており,それぞれ理由がある。(3)経営理念がコントロールに重要な役割を果たしている可能性がある。 2.職能横断的組織を広義に捉え,その効率化をめぐって以下の考察をした。(1)国籍,チームの種類によりその効率性を高める方法は異なる。(2)職能間の情報の流れを促進するための手段としてコンピュータ情報システムを利用するという方法があるが,コンピュータに入力できない情報を重視し実質的にface to faceの会議と電話・FAXで情報と価値を共有化して成功している企業もある。(3)ホワイトカラー(例えば研究職)の評価は困難であり,会計数値による結果評価よりも別の尺度によるプロセス評価,長期的評価,金銭的報酬以外のインセンティブの方が重要な意味をもっている可能性が高い。(4)マイクロ・プロフィット・センター(MPC)に注目する場合,競争を基本とし会計数値により管理している企業もあれば,協力を基本とし数十人単位で分社し経営理念の浸透や大幅な権限委譲および結果よりもプロセス評価による組織活性化を重視している企業もある。(5)短期的能力主義に基づいたインセンティブの導入は求心力を保つ工夫がなければ組織の分裂につながる。例えばストックオプションにより維持したり,経営理念の浸透による方法が考えられる。(6)今後,分権化の度合い,求心力の源泉,組織活性化の方法等いくつかの軸を設けてMPCを分類し成功の秘訣とMCに会計システムがどのようにかかわっているかを検討していきたい。
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