研究概要 |
向きづけられたコンパクト多様体M上の向きづけられた余次元1葉層に対して,有限な有向グラフG(M,F)を自然に対応させることができ,逆に,任意の有限な有向グラフGに対して,上述のような葉層(M,F)で,G=G(M,F)となるものが存在することもわかった。特にM=T^2の場合は|G|はS^lに同相になるので,完全にG(T^2,F)は決定できる。また,G(T^2,F)からT^2へ"良い"埋め込みが存在して,それによって誘導される基本群間の準同型は単射になる。多様体の次元が3以上の場合は状況が複雑になりそうだが,やはり,同じようにG(M,F)からMへの"良い"埋め込みが存在し,かつ,それにより誘導される基本群間の写像π_1(G)→π_1(M)は単射になることが証明できた。更に,このG(M,F)をMにうめ込んだものは,Fのすべての葉と交わるので、Fを単に横断的な集合上のpseudo-groupレベルで考えるかわりに,グラフG上にpseudo-groupが作用しているという形で取り扱うことができるので,今までpseudo-groupのアプローチで得られていたものを,グラフ上での議論で見直すことも可能と思われるが,これは,今後の課題である。また,上述の対応(M,F)→G(M,F)によって,有向グラフ上に(M,F)のいろいろな概念を持ち込むことができるので,今まで知られているグラフの諸結果との対応や、一般化した取り扱いの可能性が期待できる。これらについては,現在,基本的な定義等の導入段階でまだ論文にまとめるには至っていない。
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